「ほかの誰とも違うアイデアを生み出したい」と思うのは、創作をしている人なら一度は考えることではないでしょうか。
漫画、小説、ゲーム、動画、ブログ。どんなジャンルであれ、ありきたりな設定や展開だけでは、なかなか読者や視聴者の記憶には残りません。
とはいえ、斬新なアイデアは「机にかじりついて気合いでひねり出すもの」というより、脳がアイデアを出しやすい状態を作ってあげるほうが大事だったりします。
そこで今回は、心理学や創造性研究を参考にしながら、斬新なストーリーや設定のアイデアを考える方法を10個まとめます。
「その発想があったか!」と言われる切り口を見つけたい方は、参考程度にどうぞ。
1. あえて集中しすぎない
良いアイデアを出そうとすると、つい「集中しなければ」と考えがちです。
しかし、創造性の研究では、外部の刺激を完全にシャットアウトするより、ある程度いろいろな刺激を拾いやすい状態のほうが、現実世界での創造的な実績と関係する可能性が示されています。
ざっくり言えば、脳の門番が少しゆるい状態です。
普通なら「関係ない」と捨ててしまう情報まで拾うので、頭の中で思わぬ組み合わせが起こりやすくなるわけですね。
逆に、ひとつのことに集中しすぎると、既存のルールや常識の範囲内で考えやすくなります。もちろん集中力は大事ですが、アイデア出しの初期段階では、少しぼんやりする時間も役に立つかもしれません。
「良いアイデアが出るまで机から動かないぞ」と粘るより、散歩をする、シャワーを浴びる、部屋を片づける、ぼんやり窓の外を見る。そういう一見ムダな時間が、意外とアイデアの発火点になります。
2. 最初は一人で考える
アイデア出しというと、みんなで集まってブレインストーミングする場面を想像するかもしれません。
しかし、ブレインストーミングに関する研究では、集団でいきなりアイデアを出すより、まず個人で考えたほうが多くの案が出やすいことが示されています。
人と話し合うと、どうしても「変なことを言ったらどうしよう」「相手に合わせたほうがいいかな」というブレーキがかかります。
その結果、本当は面白いかもしれない奇妙なアイデアが、口に出す前に自分の中で却下されてしまうわけです。
なので、斬新なアイデアを出したいときは、まず一人で考えるのがおすすめです。
- 最初は一人で大量にアイデアを出す
- ある程度まとまったら人に見せる
- 最後に第三者の意見を参考にして磨く
この順番のほうが、変なアイデアを守りつつ、最終的な完成度も上げやすくなります。
ただし、本当に斬新なアイデアは、最初に見せたとき「それはやめたほうがいい」と言われることもあります。意見を聞くことは大事ですが、他人の反応だけでアイデアを即死させないほうがいいでしょう。
3. 点と点をつなげる
アイデアは、完全なゼロから突然生まれるというより、すでにある知識や経験が組み合わさって生まれることが多いです。
創造性に関する研究でも、その分野に関する知識や経験は、創造的な活動を支える要素のひとつとされています。
つまり「何も知らないほうが斬新な発想ができる」というより、むしろ材料をたくさん持っている人のほうが、意外な組み合わせを作りやすいわけです。
たとえば物語のアイデアを出したいなら、映画、漫画、小説、ゲーム、神話、歴史、ニュース、心理学、日常の失敗談など、いろいろな材料を頭の中に入れておく必要があります。
「異世界転生」と「会社員の燃え尽き症候群」をつなげれば、ただの冒険譚ではなく、現代人の疲れを扱うファンタジーになるかもしれません。
「ホラー」と「家計簿」をつなげれば、支出のたびに怪異が近づいてくる節約ホラーが作れるかもしれません。
斬新なアイデアとは、空から降ってくる雷ではなく、頭の中に散らばったガラクタ同士が、ある日カチッとはまる瞬間なのです。
4. 広い場所に行く
アイデアに詰まったときは、場所を変えるのも効果的です。
狭い部屋で同じ画面を見つめ続けていると、思考も同じ場所をぐるぐる回りやすくなります。
逆に、天井が高い場所、見晴らしのいい場所、河原、公園、海辺、広いカフェなどに行くと、視界が広がります。視界が広がると、気分も少しゆるみます。
すると、ひとつの問題にロックオンしていた脳が、周辺の情報も拾いやすくなります。
アイデア出しで重要なのは、頭を無理やり絞ることではなく、頭の中に風を通すことです。
特に、自然がある広い場所を歩くのはかなり相性が良いです。後述する「自然」「歩く」の効果もまとめて取り入れられるからです。
5. 照明を少し暗くする
アイデアを考えるときは、照明を少し暗くしてみるのも手です。
明るすぎる部屋は、作業や事務処理には向いています。ミスを減らしたり、細かい文字を読んだり、正確に作業したりするには便利です。
一方で、斬新なアイデアを考えるときは、少し暗い環境のほうがリラックスしやすく、自由な発想に入りやすいことがあります。
もちろん、暗すぎて眠くなってしまうなら逆効果です。
おすすめは、作業用の明るさと、妄想用の明るさを分けることです。
- 文章を書くときは明るめ
- 構想を練るときは少し暗め
- 寝る前のメモ時間は暖色系
スマート電球などを使えば、部屋の明るさや色をすぐ変えられるので便利です。
創作部屋は、工場ではなく秘密基地です。ずっと蛍光灯全開にするより、少し怪しい雰囲気のほうが、変なアイデアも顔を出しやすくなります。
6. 集中できない時間をアイデア時間にする
一日の中には、集中しやすい時間と、どうしても集中できない時間があります。
集中できない時間に、無理やり難しい作業をしようとすると苦しくなります。
しかし、集中できない時間は、見方を変えればアイデア出しに向いている時間でもあります。
たとえば夜、寝る前に頭がぼんやりしているときは、論理的な作業には向いていないかもしれません。
でも、物語の設定を妄想したり、キャラクター同士の会話を考えたり、変なタイトル案を出したりするには向いていることがあります。
大事なのは「集中できない自分はダメだ」と考えるのではなく、時間帯ごとに役割を変えることです。
- 頭が冴えている時間は、執筆・編集・設計
- 少しぼんやりしている時間は、アイデア出し・妄想・メモ
- 疲れている時間は、資料集め・散歩・インプット
集中力が落ちた時間を、無理やり戦場にする必要はありません。そこはアイデアの放牧場にしてしまいましょう。
7. 自然にふれる
アイデアを出したいときは、自然にふれるのもおすすめです。
自然の中を歩く、木を見る、川の音を聞く、空を眺める。こうした行動は、ストレスをやわらげたり、リラックスを助けたりする可能性があります。
また、自然の写真を見るだけでも、都市的な景色を見る場合と比べて、自律神経の回復に関係する反応が見られた研究があります。
自然音についても、人工的な音と比べて、脳のネットワークや自律神経反応に違いが見られた研究があります。
つまり、近所に森や海がなくても、自然写真や環境音を使えば、ある程度は「自然っぽい環境」を作れるわけです。
アイデアに詰まったときは、机の前でうなり続けるより、外に出て少し歩く。外に出られないなら、自然音を流して、自然の写真を見る。
脳にとっては、それだけでも窓を開けるような効果があるかもしれません。
8. 観葉植物を置く
自然の中に行くのが難しいなら、部屋に観葉植物を置くのも手です。
観葉植物は、部屋の雰囲気をやわらげてくれます。
作業部屋がパソコン、ケーブル、書類、モニターだけで埋まっていると、どうしても「処理する場所」という空気になりがちです。
そこに植物がひとつあるだけで、部屋の中に少しだけ余白ができます。
本物の植物を育てるのが面倒なら、フェイクグリーンでも構いません。目的は植物の世話を完璧にすることではなく、視界の中に自然っぽい要素を入れることです。
創作部屋に植物を置くのは、脳内の砂漠に小さなオアシスを置くようなものです。
9. 歩く
歩くことは、アイデア出しとかなり相性が良い行動です。
歩行と創造的思考を調べた研究では、座っているときより歩いているときのほうが、創造的なアイデアが出やすくなることが示されています。
歩くと、体がリズムを刻みます。視界も少しずつ変わります。血流も変わります。
すると、止まっていた思考も一緒に動き出しやすくなります。
アイデア出しのために歩くときは、激しい運動をする必要はありません。むしろ、考えごとができるくらいの軽い散歩で十分です。
- スマホにメモアプリを開いて歩く
- ボイスメモを使って思いついたことを録音する
- 同じ道ではなく、少しだけ違う道を歩く
良いアイデアは、椅子の上で正座して待つより、足で迎えに行ったほうが見つかりやすいのかもしれません。
10. 手を動かす
考えごとをするとき、無意識に手を動かしてしまう人は多いと思います。
ペンを回す、指で机をトントンする、手を振る、空中に図を描く、顎に触る。
一見すると落ち着きがないだけに見えますが、ジェスチャーは思考を助けることがあります。
ジェスチャーに関する研究では、手を動かすことが考え方を変えたり、問題解決や創造的なアイデア生成を助けたりする可能性が示されています。
特に、頭の中だけで考えているとモヤモヤするアイデアは、手を動かして外に出したほうが扱いやすくなります。
- 紙にラフを描く
- キャラクターの関係図を書く
- 手で空中に動きを描く
- セリフを言いながら身振りをつける
頭の中だけで考えると、アイデアは霧のように消えます。
でも、手を動かすと、霧が少しずつ形になります。
創作に詰まったら、キーボードだけでなく、紙、ペン、ホワイトボード、ジェスチャーも使ってみるといいでしょう。
まとめ:アイデアは気合いではなく「出やすい状態」を作る
斬新なストーリーや設定のアイデアを出すには、ただ気合いで考え続けるより、アイデアが出やすい状態を作ることが大事です。
- 集中しすぎず、少しぼんやりする
- 最初は一人で考える
- 知識や経験を増やして、点と点をつなげる
- 広い場所に行く
- 照明を少し暗くする
- 集中できない時間をアイデア時間にする
- 自然にふれる
- 観葉植物を置く
- 歩く
- 手を動かす
アイデアは、命令しても出てきません。
猫みたいなものです。
「今すぐ来い」と呼んでも来ないのに、こちらが油断していると、いつの間にか膝の上に乗っています。
だからこそ、アイデアが寄ってきやすい環境を作っておくことが大事です。
机の前でうなっても何も出ないときは、散歩する。自然音を流す。照明を少し落とす。紙に落書きする。くだらない案でもメモしておく。
そうやって脳の中に余白を作っておくと、ある日ふと「これ、面白いかも」というアイデアが転がり込んでくるかもしれません。
アイデア出しのおすすめ本
最後に、アイデア出しや創造性について学びたい人向けに、おすすめ本を紹介します。
FUTURE INTELLIGENCE
アイデアを出すための習慣や考え方が、短いエピソード形式で紹介されている本です。
偉人のエピソード集として読んでも面白いですし、各章が短めなので、読書に慣れていない人でも読みやすいと思います。
ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代
「人とは違う斬新な作品を作りたい」という人には、アダム・グラントの『ORIGINALS』もおすすめです。
アイデア、成功、独創性に関する思い込みを、さまざまな研究や事例からひっくり返してくれる本です。
少し分厚いですが、創作や情報発信をしている人なら、読んでおいて損はない一冊です。
藤子・F・不二雄の発想術
僕がもっとも影響を受けた漫画家藤子・F・不二雄先生の生前のインタビューをまとめた本。
科学的なバックグラウンドがある内容ではないものの、F先生の滲み出る好奇心や、思考の柔軟さが垣間見える良い本です。短くて読みやすいので、読書慣れしてなくてもサクッと読めるのではないかと。
参考文献
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