バズるヒット作を生みやすい漫画家の特徴が判明~売れる作家は4つ以上のジャンル経験がある~

ヒット作を生みやすいクリエイターには、どんな特徴があるのか?

今日は「ヒット作を生みやすいクリエイターには、どんな特徴があるのか?」という話です。

ビル・ゲイツがおすすめしたことでも話題になった『RANGE(レンジ) 知識の「幅」が最強の武器になる』に、なかなか面白い研究が紹介されていました。

漫画やラノベを描いている人なら、誰しも「ヒットする作品を作りたい」と思うでしょう。

それはブロガーやYouTuberも同じで、せっかく作るなら多くの人に届くコンテンツを作りたいはずです。

そこで今回は、アメリカで行われた「コミックとヒットの関係」に関する研究を参考にしながら、ヒットするクリエイターの条件について考えてみます。

対象になっているのは昔のアメコミですが、これは現代の日本にもかなり当てはまる話ではないかと思いました。

1. どんなクリエイターがヒット作を生みやすいのか?

今回参考にする研究は、ざっくり言うと、

クリエイターのどんな特徴が、コミックのヒットや失敗に関係していたのか?

を調べたものです。

研究対象は、1972年から1996年にアメリカで出版されたコミック。

研究者たちは、出版社、クリエイター、ジャンル、チーム構成などを分析し、どのような条件が作品の評価と関係していたのかを調べました。

1-1. ヒットにあまり関係がなかったこと

まず、この研究で「意外とヒットに関係していなかった」とされるものがあります。

それが以下のような要素です。

  • 出版社の経営資源
  • 作品の大量生産
  • クリエイターの経験年数

出版社の規模や予算がヒットとあまり関係していなかったというのは、少し意外に思えます。

しかし、考えてみれば、今の時代でもXやPixiv発の漫画が大きく話題になることがあります。大手出版社の作品だけがヒットするわけではありません。

たとえば『100日後に死ぬワニ』のように、個人発のコンテンツが一気に広がるケースもあります。

また、作品を大量に作ればヒットしやすいかというと、そう単純でもありません。

漫画、ラノベ、Web小説、動画、ブログ記事など、現代はあらゆるコンテンツが大量に作られています。

しかし、大量に作られているからといって、そのすべてがヒットするわけではありません。

むしろ大量生産されているからこそ、ほとんどの作品は埋もれてしまいます。

さらに面白いのは、クリエイターの経験年数もヒットと強い関係がなかったという点です。

長くやっていれば必ずヒット作が作れる、というわけではないんですね。

実際、『ONE PIECE』『進撃の巨人』『鬼滅の刃』など、初連載や比較的早い段階で大きなヒットを生んだ作品もあります。

経験年数はもちろん無意味ではありません。

ただし、「長く続けていること」そのものが、そのままヒットにつながるわけではない、ということでしょう。

1-2. ヒットに関係していたこと

では、ヒットに関係していたのは何だったのか。

この研究で重要だとされたのは、

クリエイターが複数のジャンルに関わった経験があるか

という点でした。

つまり、経験の「長さ」ではなく、経験の「幅」が大事だったわけです。

具体的には、SF、ミステリー、ファンタジー、ホラー、アダルトなど、複数のジャンルに関わった経験を持つクリエイターほど、評価の高い作品を生みやすい傾向があったそうです。なるほど。

一つのジャンルだけを見ていると、そのジャンルの「お約束」には詳しくなりますが、お約束の中だけで考えていると、どうしても似たような発想になりやすい。

一方で、複数のジャンルに触れている人は、別のジャンルの発想を持ち込むことができます。

たとえば、

  • 「少年漫画の熱さ」×「ホラーの緊張感」
  • 「恋愛ものの感情描写」×「SFの世界観」
  • 「RPGの成長システム」×「ミステリーの謎解き」

みたいな組み合わせです。

こうした異なるジャンルの組み合わせが、作品に新しさを生むわけです。

料理で言えば、同じ調味料だけで作るより、別ジャンルのスパイスを持ち込んだほうが変なうま味が出る、みたいな感じですかね。

そういえば、以前読んだ『藤子不二雄の発想術』でも、藤子不二雄先生が似たようなことを語っていました。

また、『RANGE』の中では、宮崎駿監督が下積み時代にさまざまなジャンルの作品制作に関わっていたことも紹介されています。

名作を生む人は、ひとつの道だけをまっすぐ歩いてきたというより、いろんな道を歩いた経験を、あとから作品の中でつなげているのかもしれません。

1-3. チームと個人、どちらが強いのか?

ここで気になるのが、

それなら、いろんなジャンルの専門家を集めてチームを組めばいいのでは?

という点です。

たしかに、SFに詳しい人、ミステリーに詳しい人、恋愛ものに詳しい人、ギャグに詳しい人を集めれば、最強のチームができそうです。

この研究でも、その点は検討されています。

結論をざっくりまとめると、以下のようになります。

  • 知識の幅が狭い個人よりは、多様な専門家がいるチームのほうがよい
  • しかし、多様な知識をひとりの中で統合できる個人は、さらに強い

つまり、ベストなのは「いろんなジャンルを知っていて、それを自分の中で組み合わせられるクリエイター」だったと。

研究者たちは、この論文のタイトルでそれを「スーパーマン」と「ファンタスティック・フォー」にたとえています。

スーパーマンは、ひとりで多様な知識を持ち、それを作品に統合できる個人。

ファンタスティック・フォーは、それぞれ違う専門性を持ったチームです。

理想は、多様な知識を持った「スーパーマン」のような個人。

もしそういう人がいない場合は、各ジャンルの専門家を集めた「ファンタスティック・フォー」のようなチームを作るのがよい、というわけです。

SF担当、恋愛担当、ギャグ担当を集めても、それぞれの発想がバラバラのままだと、作品としてはまとまらない。

カレー、寿司、ラーメンの材料を全部鍋に入れても、名作料理になるとは限らないのと同じですね。

でも、それぞれの味を理解している人がうまく調理すれば、見たことのない新メニューになる可能性があります。

創作もそれと同じで、ただ知識が多いだけではなく、異なる知識をつなげる力が必要なんですねぇ。

2. 現代のクリエイターにも当てはまる話

この研究は昔のアメコミを対象にしたものですが、現代の日本にもかなり当てはまると思います。

今は、漫画もラノベもWeb小説もYouTubeもブログも、コンテンツが大量に作られています。

その中で目立つには、ただ上手いだけではなかなか厳しい。

絵が上手い人も、文章が上手い人も、編集が上手い人も、今は山ほどいます。

だからこそ重要になるのは、

この人は、ほかの人と何が違うのか?

という部分なのかと。

その違いを作るうえで、知識や経験の幅はかなり大きな武器になります。

漫画しか読んでいない人が漫画を描くよりも、映画、ゲーム、音楽、歴史、心理学、スポーツ、エロゲ、ホラー、ビジネス書など、いろんなものに触れている人のほうが、変な組み合わせを思いつきやすい。

そして、その変な組み合わせこそが、作品の個性になることがあります。

もちろん、幅を広げるだけでヒット作が作れるわけではありません。

いろんなものを見ただけで終わってしまえば、ただの雑学コレクターです。

大事なのは、別ジャンルで得た知識や感覚を、自分の作品にどう持ち込むかです。

  • 「このホラー映画の緊張感、ラブコメに使えないか?」
  • 「このゲームの成長システム、ブログの構成に使えないか?」
  • 「このエロゲの会話テンポ、漫画の掛け合いに応用できないか?」

こういうふうに、ジャンルをまたいで発想できる人ほど、ほかの人と違うコンテンツを作りやすいのではないでしょうか。

3. まとめ

ということで今回は、

ヒット作を生みやすいクリエイターには、知識や経験の幅がある

という話でした。

一つのジャンルを深く掘ることはもちろん大事です。

ただ、それだけだと発想がそのジャンルの中に閉じてしまうことがあります。

むしろ、まったく別のジャンルで得た知識や経験が、自分の作品に新しい切り口を与えてくれることがある。

ヒット作は、必ずしも長く続けた人や、大きな組織から生まれるわけではありません。

いろんなジャンルを見て、触れて、考えて、それを自分の中で混ぜられる人。

そういう人が、ほかとは違う作品を生みやすいのかもしれません。

ということで、私もやっぱりエロゲ制作に手を出してみたいなーと思った次第です。

ではでは。


参考:
Taylor, A., & Greve, H. R. (2006). Superman or the Fantastic Four? Knowledge Combination and Experience in Innovative Teams. Academy of Management Journal, 49(4), 723–740.