諌山創先生に学ぶ「キャラ創作は過去のヒットキャラに学べ」という説

「読者に愛される人気キャラをつくりたい」てのは創作家共通の願望でしょう。

となると実際に人気なキャラクターの創作秘話が気になってしまうところですが、

「進撃の巨人」の諌山創先生が、同作の人気キャラ、ミカサやリヴァイは「読者ウケを狙って創作した」と公言していた対談インタビュー(出典:Brutus No. 790)が面白かったのでご紹介します。

具体的には、自分のターゲットが過去に熱狂したキャラを分析して類似点を取り入れたそうな。

リヴァイ兵長は「腐女子が過去に熱狂したキャラ」の分析から生まれた

今回の参考文献は雑誌BrutusのNo790に掲載された、進撃の巨人の作者、諌山創先生と、精神科医齋藤環先生の対談です。

諌山先生が述べていたのは以下のようなこと。

  • ミカサやリヴァイは過去のヒットキャラの類似点を分析してつくった
  • 具体的には、ターゲット読者が過去に熱狂したキャラ(エヴァの綾波レイ、幽遊白書の飛影など)を意識した(ミカサの名前が戦艦名なのもそこに由来する
  • いわゆる「萌え」の方向には走らず、地獄先生ぬ~べ~など過去に影響を受けたホラー漫画のテイストを残した

「ターゲットが過去に熱狂したキャラ」を分析したのが面白いポイントですね。

具体的には、二次創作を盛り上げてくれそうないわゆる腐女子(男子)に好かれそうな要素を分析したそうです。だから幽遊白書の飛影、なるほど。

こういった創作法の汎用性を裏づけるデータはあるか調べてみたところ、「アナロジー思考」のデータが近そうでした。

キャラ創作に役立ちそうな思考法それは「アナロジー思考」

アナロジー思考は、ケプラーが遠心力を発見したときに用いたことで有名な思考術で「異なっている事柄の類似点を探す」思考法のこと。

創作では「過去の色んなジャンルのヒット作に共通している事柄はないか?」と分析するような感じですかね。

映画の興行収入を予測する実験

アナロジー思考の面白い例として、映画の興行収入を予測した研究があります。

Lovallo、Clarke、Camererの研究では、これから公開される映画の興行収入を予測するために、過去に公開された映画のデータを参考にする方法が検証されました。

ざっくり言えば、次のような考え方です。

  • これから公開される映画の情報を見る
  • 過去に公開された映画の情報を見る
  • 「この新作は、過去のどの映画に似ているか?」を考える
  • 似ている映画の実績をもとに、新作映画の興行収入を予測する

つまり、まったくゼロから未来を当てにいくのではなく、「過去の似たパターン」を探して、そこから予測するわけです。

この研究では、こうした方法は similarity-based forecasting、つまり「類似性にもとづく予測」と呼ばれています。

アナロジー思考の予測力は数学モデルを上回った

この研究で興味深いのは、過去の類似作品をもとにした予測が、回帰モデルによる予測よりも良い結果を示した、という点です。

回帰モデルというのは、かなり雑に言えば、過去のデータを数式に入れて「この条件なら売上はこれくらい」と計算する方法です。

もちろん、数字で計算する方法は強力です。

でも、人間が「この映画、あの作品に似てない?」と考えるようなアナロジーにも、予測に使える力があるわけです。

未来を読むときに大事なのは、完全に新しい答えをひねり出すことではなく、「過去に似た構造はなかったか?」と探すことなのかもしれません。

参考:
Lovallo, D., Clarke, C., & Camerer, C. (2012).
Robust analogizing and the outside view: two empirical tests of case-based decision making.
Strategic Management Journal, 33(5), 496–512.
https://doi.org/10.1002/smj.962

注意点:1つの事例だけで判断しない

ただし、アナロジー思考にも注意点があります。

それは、1つの似た事例だけを見て判断しないことです。

たとえば、

「この映画は、あの大ヒット作に似ている。だから売れるはずだ」

と考えたとします。

でも、これだけだとかなり危険です。

1つの事例だけを根拠にすると、それはデータというより「それっぽく見えた個人の感想」に近くなってしまいます。

大事なのは、複数の事例を見比べて、共通している構造を探すことです。

1本の木だけを見て「森はこうなっている」と決めつけるのではなく、何本もの木を見て、森全体の形をつかむ。

アナロジー思考は、単なるひらめきというより、過去のパターンを集めて比べる作業に近いのです。

異なるジャンルからも類似点を探す

この考え方は、創作にも応用できます。

たとえば漫画を分析したいとき、過去のヒット漫画だけを見るのも悪くありません。

ただ、それだけだと同じジャンル内の常識に引っ張られやすくなります。

そこで、あえて別ジャンルにも目を向けます。

  • ヒットした小説との類似点は?
  • ヒットした映画との類似点は?
  • ヒットした音楽との類似点は?
  • ヒットした食品との類似点は?

こうやって別ジャンルの成功例と比べると、「ジャンルは違うけど、構造は似ている」という発見が出てきます。

たとえば、ヒットした漫画とヒットした食品は、表面的にはまったく別物です。

でも、

  • 見た瞬間に内容が伝わる
  • 人にすすめやすい
  • ついSNSで話題にしたくなる
  • 最初の一口、最初の1ページで引き込む

みたいに、構造としては似ている部分があるかもしれません。

藤子・F・不二雄先生が言うところの、異なるジャンルのアイデアをつなげる発想に近いですね。

単に「これはあれに似ている」で終わらせるのではなく「どこが似ているのか?」「どこが違うのか?」「同じ結果を生みそうな構造はあるのか?」と考え直すと良いのかもしれません。